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大阪地方裁判所 昭和40年(行ウ)106号 判決 1971年12月13日

大阪市生野区鶴橋北之町一丁目一四三番地

原告

前川平次郎

右訴訟代理人弁護士

土田嘉平

山田一夫

細見茂

右訴訟復代理人弁護士

岡村渥子

同市同区猪飼野中八丁目

被告

生野税務署長

前川登

同市東区大手前之町

被告

大阪国税局長

丸山英人

右被告ら指定代理人検事

上野至

大蔵事務官 井手智之

二宮精四郎

川中繁徳

法務事務官 東光宏

主文

被告税務署長が原告の昭和三八年分所得税について昭和三九年七月一五日付でした、総所得金額を金五七万三五〇〇円、所得税額を金二万一七五〇円とする更正処分中、総所得金額につき金四四万六六二八円、所得税額につき総所得金額を金四四万六六二八円として算定した税額を超える部分、過少申告加算税金一〇五〇円の賦課処分中、右所得税額の超過部分にかかる部分はいずれもこれを取消す。

原告の被告税務署長に対するその余の請求及び被告国税局長に対する請求はいずれもこれを棄却する。

訴訟費用は原告と被告税務署長との間においてはこれを五分し、その四を原告の、その余を同被告の負担とし、原告と被告国税局長との間においては全部原告の負担とする。

事実

(当事者の求める裁判)

原告代理人は「被告税務署長が昭和三九年七月一五日付でした、原告の昭和三八年分所得税の総所得金額を金五七万三五〇〇円、同所得税額を金二万一七五〇円とする更正処分及び過少申告加算税金一〇五〇円の賦課処分(以下これらを合わせて本件課税処分という。)はいずれも取消す。被告国税局長が昭和四〇年六月三〇日付でした、原告の右更正処分に対する審査請求を棄却する旨の裁決はこれを取消す。訴訟費用は被告らの負担とする。」との判決を求め、被告ら代理人は「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求めた。

(請求原因)

原告代理人は請求原因として次のとおり述べた。

一、原告は肩書地において飲食業を営んでいるものであるが、昭和三八年分所得税について昭和三九年三月一六日被告税務署長に対し総所得金額を金二九万二五〇〇円、所得税額を零円として確定申告したところ、同被告から本件課税処分を受けた。そこで原告はこれを不服として同年八月一五日同被告に対し異議の申立てをしたが、同年九月一五日付で棄却されたので、更に同年一〇月一三日被告国税局長に対し審査請求をしたが、同被告から昭和四〇年六月三〇日付で棄却の裁決(以下本件裁決という。)を受けた。

二、しかし本件課税処分には原告の所得を過大に認定した違法がある。

三、また本件裁決には次に述べるような違法事由がある。

(一)  原告は昭和三九年一二月一二日付で、原告の審査請求につき審理中の被告国税局長に対し行政不服審査法(以下単に審査法という。)第二二条により、処分庁である被告税務署長から提出された筈の弁明書の副本を原告に送付するように請求したが、被告国税局長は昭和四〇年二月一二日付で、処分庁たる被告税務署長に弁明書の提出を要求していないから応じられない旨回答してきた。ところで被告国税局長としては、原告の審査請求が期間徒過のため不適法であるとか、審査請求を全部認容する等の特別の事由がある場合以外は処分庁に対し同法条所定の弁明書の提出を求めるべきであるにもかかわらず、これが提出を求めず、従つて処分庁からこれが提出のないことを理由に原告の請求に応じなかつたのは違法というべきであり、このような違法な審査手続によりなされた本件裁決は違法である。

(二)  原告は同じく昭和三九年一二月一二日付で、審査法第三三条第二項に基づき、審査庁たる被告国税局長に対し本件課税処分の理由となつた事実を証する書類の閲覧を請求したところ、同被告が閲覧を許可したものは、1.原告の異議申立書、2.異議申立決定書、3.更正決定決議書、4.原告の確定申告書のみであつたが、これらはその各標題から明らかなように、いずれも本件課税処分の理由となつた事実を証するものではなく、同条第一項に所謂「書類」にあたらないことが明らかであり、右は違法な閲覧拒否と同視すべきである。従つてこのような違法な審査手続によりなされた本件裁決はまた違法である。

四、以上のとおり本件課税処分及び本件裁決はいずれも違法であるからこれが取消を求めるため本訴に及ぶ。

(請求原因に対する被告らの答弁及びその主張)

被告ら代理人は請求原因に対し、一の事実は認める、二の事実は争う、三の事実は法律上の意見を除き認めると答弁し、次のとおり主張した。

一、本件係争年分の原告の所得について

本件は実額計算できる場合ではないので推計したところ、本件係争年分の原告の総所得金額は次のとおりである。

(一)  所得計算についての主張 その一

本件係争年分の原告の総所得金額は次のとおり金六〇万六、七五二円であるから、この範囲内の所得があるとしてなされた本件課税処分は適法である。

1. 総所得金額の算出経過

<省略>

2. 売上金額の算出経過

(1) すし売上

1.5升×11人前×130円=2,145円………2,140円……… (イ)

(1日の米使用量) (単価) (10円未満切捨て)

(2) 丼物売上

2升×11人前×90円=1,980円…………………………… (ロ)

(1日の米使用量) (単価)

(3) めん類売上

40玉×50円=2,000円………………………………………… (ハ)

(1日の使用量) (単価)

(4) 米、めん類年間売上

6,120円×328回=200万7,360円……………………………… (ニ)

((イ)+(ロ)+(ハ)) (営業日数)

(5) 酒、ビール売上(年間)

ビール 大 1,200本×135円=16万2,000円

小 360本×80円=2万8,800円

酒 1級 36升×12本×90円=3万8,880円

(1升からとれる銚子数)

2級 116升×12本×55円=7万6,560円

――――――――――

合計 30万6,240円……………………… (ホ)

(6) 酒類つき出し売上(年間)

(7) 年間総売上高 ((ニ)+(ホ)+(ヘ)) 251万7,760円

3. 必要経費の算出経過

(1)  すしの必要経費

2,140円×328回×66%=46万3,268円………………… (イ)

(1日の売上) (営業日数) (経費率)

(2)  丼物、めん類の必要経費

(1,980円+2,000円)×328回×68%=88万7,700円………………… (ロ)

(1日の売上) (経費率)

(3)  酒類売上に対する必要経費 25万0864円………………… (ハ)

(4)  つき出し等売上に対する必要経費

20万4,232円×50%=10万2,116円………………… (ニ)

(経費率)

(5) 特別経費 5万8,800円………………… (ホ)

(6) 経費合計 ((イ)+(ロ)+(ハ)+(ニ)+(ホ)) 176万2,748円

(二) 所得計算についての主張 その二

かりに右(一)の主張のうち、すし米の使用量からすしの売上を推計した点の主張が容れられないとしても、他方すしの売上はすしに使用する食酢の量をもとにして推計することも可能であり、これによりすしの売上額ひいてこれによる所得金額を算出すると次のとおり金四〇万〇、七七九円となる。

<省略>

(注1)

<省略>

<省略>

しかして右すしの売上による算出所得をもとにして原告の本件係争年分の総所得金額を計算すると次のとおり金六六万三、三九九円となるからこの範囲内の所得があるとしてなされた本件課税処分は適法である。

<省略>

(三) 所得計算についての主張 その三

またかりに原告の本件係争年分の総所得金額を原告の生計費等の支出額から推計すると、次に述べるとおり金六七万五七九一円となるから、この範囲内の所得があるとしてなされた本件課税処分は適法である。

即ち本件係争年における原告の家族は原告と妻、長男(当時二六才)、同人の嫁(当時三〇才)、母(当時八〇才)及び次男(当時一五才)の六人で、これらの者はいずれも原告の扶養家族又は事業専従者となつていて、原告及びその家族には原告の事業収入以外に収入がなかつたものと思われる。そこで原告の本件係争年中の生計費等の支出額を、総理府統計局作成家計調査年報を基礎として推定すると次のとおり金八二万三、二九一円となり、原告は同年中に少くとも右支出額から専従者控除額金一四万七、五〇〇円を差引いた金額六七万五、七九一円の所得があつたものと推定されるべきである。

1. 生計費等支出額の算出経過

生計費 七五万二、〇一六円

社会保険料 一万八、六〇〇円

生命保険料 五万二、六七五円

合計 八二万三、二九一円

2. 生計費の算式

<省略>

<省略>

二、本件裁決が違法であるとの原告の主張について

(一)  弁明書副本送付拒否が違法であるとの点について

1. 審査法上弁明書の提出については同法第二二条第一項において、「審査庁は…………弁明書の提出を求めることができる」と定めているが、右規定の形式、法律の趣旨を綜合すれば、審査庁が処分庁に対し弁明書の提出を求めるか否かは審査庁の自由裁量に属する事項であると解されるから審査庁が弁明書の提出を求めることなくして裁決をしたことをとらえて裁決取消訴訟の違法事由とすることは失当である。そもそもいかなる手続に従つて審査を行うかは法律の定めるところによるのであつて、現行の行政不服審査制度の下における審査手続は同じく国民の権利救済のための制度といつても裁判所のような第三者機関が当事者の参与した対審的構造のもとに慎重に進める訴訟手続などとは異なり、処分庁の一上級行政庁にすぎない審査庁が主宰する簡易迅速な手続による権利救済を目的としているにすぎず、しかもその審理方式は徹底した対審的構造をとらず、職権主義を基調としたものであり、審査庁自らにおいて弁明書の提出を求めなくてもその他の資料によつて事案の争点が充分明瞭に把握でき、裁決をするのに何らの支障がないと判断したような場合までも含めて常に審査庁において処分庁に対し弁明書の提出を求めその提出を得た後審査請求人にその副本を送付しこれに対する反論を待つた上でないと審査手続が進められないと解するのは妥当ではなく、審査庁が処分庁に弁明書の提出を求めるか否かはその裁量に委ねられているというべきである。このことは審査法第二二条の明文上からも明らかである。また同法は審査請求人の審査庁に対する弁明書副本送付請求権については何らふれるところがないから、審査請求人から弁明書副本の送付請求があれば審査庁としては必ず処分庁に対し弁明書の提出を求め、その提出を得てその副本を審査請求人に送付すべき義務があるということもできない。

2. なお本件において審査庁が処分庁に弁明書の提出を求めなかつた理由を次に述べる。

国税に関する法律に基づく処分で所得税にかかる審査請求の審理は事案が大量に発生し、かつ当該処分に対する不服の内容が概して要件事実の認定の当否にかかるものであるから、税務行政に習熟した協議官が専らこれにあたり〔昭和四五年法律第八号による改正前の国税通則法第八三条第二項に基づく国税庁協議団及び国税局協議団令(以下「団令」という。)参照〕、協議官は審査請求の審理に当たつては、「協議官自ら必要な調査に当たり、又は国税庁長官若くは国税局長を通じ国税庁、国税局若くは税務署の当該職員に対してその調査を嘱託する外、当該審査請求の目的となつた処分に関する事務に従事した職員及び当該審査請求をした者にその意見を述べる機会を与えなければならない」(団令第五条)こととされている。このように事案が大量に発生し、かつ当該処分に対する不服が概して要件事実の認定の当否にかかるものの審査請求については、処分庁から弁明書を提出させたうえこれを審査請求人に送付し、同人からのこれに対する反論書の提出を待ちこれらの書面を資料として審理するよりも協議官が自ら進んで必要な調査を行い、処分関係職員及び審査請求人双方から口頭で意見を聴取する方がはるかに迅速で適正な処理をはかることができるのは明らかであり、この方法は所謂書面審理方式にくらべ、より一層不服審査制度の趣旨(審査法第一条第一項)に合致するものといえよう。このような見地から審査庁は本件審査手続において処分庁に対し弁明書の提出を求めなかつたものである。

3. 以上から明らかなとおり本件審査手続において審査庁が処分庁に対し弁明書の提出を求めなかつたことは違法ではないというべきである。

(二)  書類閲覧拒否が違法であるとの原告の主張について

1. 本件課税処分の理由となつた事実を証する書類としては所得調査書があつたが、これは原告からの閲覧請求当時処分庁たる被告税務署長の手許にあり、審査庁たる被告国税局長に提出されていなかつたものであり、原告の閲覧請求に対して同被告が閲覧を許したのは処分庁から送付されていた書類のすべてにわたつているから原告の主張は失当である。

2. なお被告国税局長は原告から書類の閲覧請求がなされたので日時及び場所を指定してこれを許可したのであるが、原告は右指定日に閲覧を行わなかつたものである。このように閲覧を許可されたにもかかわらず、あえてその指定日時に閲覧せず、閲覧を許可された書類の記載内容を了知することなくして裁決があつた後、後日閲覧拒否と同視される旨の主張をするのは著しく事実をまげるものというほかなくこの点からも原告の右主張は失当である。

(被告らの主張に対する原告の答弁)

原告代理人は被告らの主張に対し次のとおり答弁した。

一、所得計算についての主張 その一について

(一)  総所得金額の算出経過の主張について

売上金額及び特別経費を除く必要経費の金額を争い、従つて総所得金額を争うが、その余の金額は認める。

(二)  売上金額の算出経過の主張について

1. (すし)すし米の一日の使用量が一・五升であることは争う。一・二五升である。また一人前の平均単価が一三〇円であることは争う。一二〇円である。尤もすし米一升から一一人前のすしができることは認める。

2. (丼物)一日の米の使用量は認めるが、一升から一一人分できることは争う。精々一〇人分である。また一人分の平均単価が九〇円であることは争う。八〇円である。

3. (めん類)一日の使用量が四〇玉であることは争う。三〇玉である。尤も一玉から一人分ができその単価が五〇円であることは認める。

4. (酒類)酒一級、同二級の単価が同被告主張のとおり九〇円、五五円であることは争う。酒一級は八〇円、同二級は五〇円である。その余の事実は認める。

5. (つき出し)酒類売上に対するつき出しの売上率は認めるが、酒類の売上額を争うことは右のとおりである。

6. 年間営業日数が同被告主張のとおりであることは認める。

(三)  必要経費の算出経過の主張について

特別経費は認めるが、その余の経費の額は争う。酒類売上に対する必要経費は二四万九、七三六円である。尤もすし、丼物、めん類、つき出しの各売上に対する必要経費の割合(経費率)はいずれも認める。年間営業日数は認める。

二、所得計算についての主張 その二について

同被告の主張事実はすべて争う。

三、所得計算についての主張 その三について

同被告のこの点の主張には原告が平均的生計を営んでいるということが仮定されているが、このような仮定が許される根拠は全く存せず、右主張の不当性は明らかである。かりに同被告主張のような基準生計費を基礎としての所得の推計が許されるとしても、基準生計費は六人家族で五〇万九、四九三円(五人家族の生計費に五人家族と四人家族の生計費の差額を加えたもの)であり、これに同被告主張の社会保険料、生命保険料を加算してもその額は五八万〇、七六八円にすぎず、これより更に専従者控除額を差引けばこれが本件課税処分において前提とされた所得金額を下廻わることは明らかであり、同処分の違法は免れない。

四、裁決が適法であるとの主張について

争う。

(証拠)

原告代理人は甲第一乃至第四号証を提出し、証人金谷幸雄の証言及び原告本人尋問の結果を援用し、乙第三号証、第七号証の一乃至六、第八号証の一、二、第九号証の一乃至五の各成立はいずれも不知、その余の乙号各証の成立はいずれも認めると述べ、被告ら代理人は乙第一、第二、第四、第八号証の各一、二、第三、第五号証、第六号証の一乃至四、第七号証の一乃至六、第九号証の一乃至五を提出し、証人中井英一の証言を援用し、甲第一号証の成立は不知、その余の甲号各証の成立はいずれも認めると述べた。

理由

一、本件課税処分の取消を求める請求について

(一)  請求原因一の事実は当事者間に争いがない。

(二)  そこで本件課税処分に原告の本件係争年分の所得を過大に認定した違法があるかどうかについて判断するが、本件が推計によりうる事案であることについては原告もこれを明らかに争わないので自白したものと看做す。

ところで被告税務署長はこれが推計につき三種の主張(所得計算についての主張その一乃至その三)をしているのでそのうちいずれの主張が最も妥当であるかを検討すると、先ず所得計算についての主張その三の生計費からの推計についてみると、本件係争年における原告及びその家族の生計費は反証のない限り原告の同年中の所得から賄われたものと推定されるから、本件係争年において原告には少くともその年中における生計費相当の所得があつたものと推定することは可能であるが、原告の同年中における生計費を同被告主張のように「大阪市における一世帯当たり年平均一カ月間の消費支出総額(但しこれを原告の世帯人員数で修正したもの)」と同程度であつたとの推定を妥当とすべき的確な資料の提出のみられない本件においてはにわかに右の推計方法を採ることはできず、また所得計算についての主張その一及びその二はいずれも一日の米使用量からすし及び丼物の各売上を推計し、一日の原料めんの使用量からめん類の売上を推計するなどして原告の本件係争年分の総売上額を推計するものであるが、その二の主張はその一の主張とは異なり、すしの売上を推計するにつき用いられた一日の米の使用量を更に食酢の仕入数量から推算するものであるところ、一日の米使用量については後記のとおり直接これを把握できるのであるからその二の主張は妥当でなく、採用の限りでない。しかしてその一の主張はそれ自体妥当な推計方法というべきであるから当裁判所はこれにより原告の本件係争年分の総所得金額を算定することとする。そして原告方で取扱つていた商品がすし、丼物、めん類それに酒肴類であつたことは当事者間に争いがないので、順次これらの売上による所得額についてみることにする。

1. すしの売上によるもの

すし米の一日の平均使用量及びすし一人前の平均売上単価がそれぞれ同被告主張のとおりであることを認めるに足る証拠は証人中井英一の証言によつてその成立を認める乙第七号証の一、三及び同証言を措いてはなく、そしてこれらはにわかに信用できないが、すし米の一日の平均使用量が一・二五升であること、一人前の平均売上単価が一二〇円であることはいずれも原告の自認するところであり、すし米一升から一一人前のすしができることは当事者間に争いがないので、これによりすしの一日の売上額を計算すると金一、六五〇円となり(算式は左記<1>)、これに当事者間に争いがない年間営業日数三二八日を乗ずると、すしの年間売上額は五四万一、二〇〇円となる(算式は左記<2>)。

<1>  1.25升×11人前×120円=1,650円

(1日の米使用量) (売上単価)

<2>  1,650円×328日=54万1,200円

(営業日数)

ところですしの売上に対する経費率が六六%であることは当事者間に争いがないのでこれによれば右売上に対する必要経費は金三五万七、一九二円(算式は左記<3>)となる。

<3>  54万1,200円×0.66=35万7,192円

従つてすしの売上による算出所得額は金一八万四、〇〇八円となる(算式は左記<4>)

<4>  54万1,200円-35万7,192円=18万4,008円

2. 丼物の売上によるもの

米の一日の平均使用量が二升であることは当事者間に争いがないところ、一升から一一人分できること及び一人分の平均売上単価が同被告主張のとおりであることを認めるに足る証拠は前記乙第七号証の一、三及び証人中井英一の証言を描いてはなく、そしてこれらはにわかに信用できないが、米一升から一〇人分できること及び一人分の平均売上単価が八〇円であることはいずれも原告の自認するところであるから、これにより丼物の一日の売上額を計算すると金一、六〇〇円となり(算式は左記<1>)、これに前記年間営業日数を乗ずると、丼物の年間売上額は金五二万四、八〇〇円となる(算式は左記<2>)。

<1>  2升×10人前×80円=1,600円

(1日の米使用量)

<2>  1,600×328日=52万4,800円

(営業日数)

ところで丼物の売上に対する経費率が六八%であることは当事者間に争いがないのでこれによれば右売上に対する必要経費は金三五万六、八六四円となる(算式は左記<3>)。

<3>  52万4,800×0.68=35万6,864円

従つて丼物の売上による算出所得額は金一六万七、九三六円となる(算式は左記<4>)

<4>  52万4,800円-35万6,864円=16万7,936円

3. めん類の売上によるもの

同被告主張のめん類の一日の使用量が四〇玉であることを認めるに足る証拠は前記乙第七号証の一及び証人中井英一の証言を措いてはなく、そしてこれらはにわかに信用できないが、一日の使用量が三〇玉を下らないことは原告の自認するところであり、また一玉から一人分ができ、その平均売上単価が五〇円であることは当事者間に争いがないので、これによりめん類の一日の売上額を計算すると金一、五〇〇円となり(算式は左記<1>)、これに前記年間営業日数を乗ずると、めん類の年間売上額は金四九万二、〇〇〇円となる(算式は左記<2>)

<1>  30玉×1人分×50円=1,500円

(1日の使用量) (売上単価)

<2>  1,500円×328日=49万2,000円

ところでめん類の売上に対する経費率が六八%であることは当事者間に争いがないのでこれによれば右売上に対する必要経費は金三三万四、五六〇円となる(算式は左記<3>)。

<3>  49万2,000円×0.68=33万4,560円

従つてめん類の売上による算出所得額は金一五万七、四四〇円となる(算式は左記<4>)。

<4>  492,000円-33万4,560円=15万7,440円

4. 酒類の売上によるもの

酒の売上単価を除き当事者間に争いがないが、酒の売上単価については同一級の売上単価が九〇円、同二級のそれが五五円であることを認めるに足る証拠は前記乙第七号証の一、四及び証人中井英一の証言を措いてはなく、そしてこれらはにわかに信用できないので、原告が自認する、酒一級の売上単価八〇円、同二級のそれ五〇円の限度で認めるほかはなく、これにより酒類の年間売上額を計算すると金二九万四九六〇円となる(算式は左記<1><2>)。

<1>  ビール大 1,200本×135円=16万2,000円

(売上数量) (単価)

小 360本×80円=2万8,800円

酒 1級 36升×12本×80円=3万4,560円

(1升からとれる銚子の数)

2級 116升×12本×50円=6万9,600円

<2>  16万2,000円+2万8,800円+3万4,560円+6万9,600円=29万4,960円

ところで右売上に対する必要経費が同被告主張の額であることを認めるに足る証拠はないが、これが二四万九、七三六円であることは原告の自認するところであるから、これにより酒類の売上による所得額を計算すると金四万五、二二四円となる(算式は左記<3>)

<3>  29万4,960円-24万9,736円=4万5,224円

5. つき出しの売上によるもの

酒類の売上に対するつき出しの売上率が2/3であることは当事者間に争いがないのでこれによりつき出しの年間売上額を算定すると金一九万六、六四〇円となる(算式は左記<1>)。

<1>  <省略>

ところで右売上に対する必要経費の割合が五〇%であることは当事者間に争いがないから、これにより必要経費の額を算定すると金九万八、三二〇円となり(算式は左記<2>)、従つてつき出しの売上による所得額は金九万八、三二〇円となる。

<2>  <省略>

以上からすると原告の本件係争中の総所得金額は、右1乃至5の各売上による所得額を合計した金六五万二、九二八円から当事者間に争いのない特別経費及び専従者控除額を差引いた残額金四四万六、六二八円であるというべきであり、従つて本件更正にかかる総所得金額金五七万三、五〇〇円のうち右の金四四万六、六二八円を超える部分、所得税額のうち総所得金額を金四四万六、六二八円として算定した税額を超える部分及び過少申告加算税金一、〇五〇円の賦課処分中右所得税額の超過部分にかかる部分はいずれも違法であるから取消されるべきであり、原告のその余の請求は失当である。

二、本件裁決の取消を求める請求について

(一)  請求原因一の事実は当事者間に争いがない。

(二)  弁明書副本送付拒否が違法であるとの主張について

審査手続に関し現行国税通則法第九三条のような法令の定めが存しなかつた本件裁決当時においては審査庁が処分庁に弁明書の提出を求めるか否かは審査庁の裁量に委ねられていたと解すべきであり(当裁判所昭和四六年五月二四日判決、同年六月二八日判決参照)、また審査法第二二条は審査請求人の審査庁に対する弁明書副本送付請求権については何らふれるところがないから審査請求人から弁明書副本の送付請求があれば審査庁として必ず処分庁に対し弁明書の提出を求め、その提出を得てその副本を審査請求人に送付すべき義務があるとも解されないから、本件審査手続において審査庁である被告国税局長が原告からの弁明書副本送付請求に対し、処分庁である被告税務署長に弁明書の提出を求めておらず、従つてその提出がないからこれに応じられないとした処置には違法はなく、原告のこの点の主張は失当である。

(三)  書類閲覧拒否が違法であるとの主張について

本件課税処分の理由となつた事実を証する書類として、所得調査書があつたことは被告国税局長の自認するところであるが、原告からの閲覧請求当時これが処分庁である被告税務署長から被告国税局長に提出されていたことを認めるべき資料の存しない本件ではこれが閲覧拒否をとらえて違法ということはできないから原告のこの点の主張は失当である。

(四)  右のとおり本件審査手続に違法はなく、従つてこれに基づきなされた本件裁決には取消事由を見出し難いからこれが取消を求める原告の請求は失当である。

三、結論

以上のとおり原告の本件課税処分の取消を求める請求は前記の限度で理由があるからこれを認容し、その余は失当として棄却し、本件裁決の取消を求める請求は理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八九条、第九二条本文を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 日野達蔵 裁判官 松井賢徳 裁判官 仙波厚)

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